0802 shinsei

 江戸時代、松戸は幕府の天領として、地方の城下町のように大名や武家による直接統治を受けることなく、独自に発展を遂げました。江戸川の水運流通や水戸街道などの交通網の利便性を通じ宿場町として栄え、庶民の力が非常に強いまちでした。生粋の世話好きの松戸宿の人々は、近郷近在からの客人を手厚くをもてなしたと言われています。また、水戸街道を通じて古くから東北とも交流が深く、2011年の震災直後には日本でいち早く東北からの避難者を受け入れました。これは行政主導によるものではなく、松戸駅周辺の町会が率先して自治会館を提供することで実現しました。

 PARADISE AIRは、そんな松戸の宿場町としての歴史や風土を活かし2013年に誕生したアーティスト・イン・レジデンスです。松戸駅前のハマトモビルの1〜3階は、大手パチンコチェーン店「楽園」が営業していますが、上層階はもともとラブホテルであり、この数年は実質的に廃墟となっていました。そこで「楽園」を経営するビルオーナー浜友観光株式会社の協力を受け、4階の2部屋を活用してプログラムの運営を開始しました。国外から芸術家を公募し一定期間サポートしながら滞在制作をさせる「ロングステイ・プログラム(2名/年程度)」と、国内外から芸術家を公募し、「一宿一芸」をテーマに滞在する対価としてパフォーマンスなどの作品を発表してもらう「ショートステイ・プログラム(1名/月程度)」を実施しています。

 今年度の「ロングステイ・プログラム」テーマは「HERE(現在地)」とし、江戸川などの地域資源を活かしながら、時間的/空間的にもまちの具体的な「場」と関わるプランを募集します。どこにでもありそうな郊外都市でありながら、ここにしかないリアルなまちとしての「松戸」を題材に、普遍的なアートとまちとの関係性を探っていきます。ロングステイ・プログラムやショートステイ・プログラムのいずれの場合でも、芸術家による「芸」だけでなく、まちや住民が芸術家を受け入れ、関わることで実現する「宿」にも重点を置いています。住民が芸術家のリサーチや制作の現場に立ち会うことで、他者の視点を通して改めてまちや暮らしを見直すきっかけになるでしょう。また、外国人芸術家からの投げかけに、私たちのまちでは何をすることができるか、作品を見るだけでなく、支援し、参加し、協働することで、今まで見えなかった地域の魅力や可能性、課題が明らかになるものと考えます。