最低にして最高の道

最低にして最高の道

高村光太郎

もうよさう。

ちひさな利慾とちひさな不平と、

ちひさなぐちとちひさな怒りと、

さういふうるさいけちなものは、

あゝ、きれいにもうよさう。

わたくしごとのいざこざに

みにくい皺(しわ)を縱によせて

この世を地獄(ぢごく)に住むのはよさう。

こそこそと裏から裏へ

うす汚い企みをやるのはよさう。

この世の拔け驅けはもうよさう。

さういふことはともかく忘れて、

みんなといつしよに大きく生きよう。

見かけもかけ値もない裸(はだか)のこゝろで

らくらくと、のびのびと、

あの空を仰いでわれらは生きよう。

泣くも笑ふもみんなといつしよに、

最低にして最高の道を行かう。

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