建築の前後左右


|日々高さを更新していくスカイツリー建設現場のすぐ麓、東武線業平橋駅と浅草駅のほぼ間に位置する。高架下で文章をかいている。昨年度までつづいていたUTMプロジェクト(上野タウンミュージアム)につづくGTS(geidai taitou sumida)プロジェクトの中で、僕たち元倉研究室が運営する、マイタワークラブの拠点である。となりでは外壁をサンダーでカットしてハンマーで粉々に打ち砕く振動、10分置き程に通る電車の音。手は昨日のペンキが小指についたまま。パソコンをひらいている。

会場となる敷地を探す中ふと出会った予想以上に魅力的で少し広すぎる、しばらく前までは倉庫として使われていたこの場所の魅力をそのまま惹きだすためにまず僕たちは、ここに藝大のそのもの創りだそうと思った。そこはいつでも行ってみれば誰かしらがそこにいて、本を呼んでいたり、音楽をきいていたり、酒を飲んでいたり。寝ていたり。たまには作品の制作をしていたりする、製図室(他の科だとアトリエ)のような場所。課題の講評などをおこない、たまにゲストをよんできてレクチャーなどをおこなうラウンジのような場所。なぜか夜になるとやってきて練習を始めだす音楽家、なぜか他の科の奴も机をかりて制作をしていたりもする。ふとした時に気づくと友達が展示をしたりして、遊びにいってそのまま酒を呑む。何か特別な「モノ」がそこにあるわけではなくて、誰かがいて何かしらの「コト」がおこっている、そんな場所。

学部のころの建築科の課題ではあくまでも、問題の中である条件、敷地があたえられて、それらをデザインをして人に伝えるというプロセスを学ぶ。けれど建築ができあがるにはその前になぜか借りられてしまった、今回のような倉庫や、決まっていた大きなプロジェクト、街の人との不思議な交流のような状況があり。出来上がったあとには、もちろんその空間で起こるさまざまな出来事、生活がある。そういう建築の前後にある「コト」がないと建築はもちろん成り立たない。そんな「コト」とはなんだろうと。学部後半から、課題と平行して学外でさまざまなことに関わってきた。院生ではさらにそれを研究の目的として活動をつづけている、そんなことを一緒にしてきた仲間と一緒に、今回のプロジェクトを創りあげている。

建築があって、その後に生活が生まれるのか、その生活のなかで起こる状況によってまた建築が必要とされるのか。僕にはどちらかわからないけれども、どんな時でも。あくまでも建築の前にあるコト、後ろにあるコトとその間にある建築との境界線を探し続けなくては行けないと思う。

ここ数年でたぶん日本で一番注目を浴びているスカイツリーの建設という壮大な「コト」の麓で、自分たちの手だけでつくりあげる壮大な「コト」を生み出す建築をつくりあげられるっていうのも、まぁそんなとこだ。 (森純平)

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